ユウキ: 博士、またニュースを見ていて気になったことが…。最近、世界的に「自国ファースト」みたいな動きが強いって言いますよね。日本でも「参政党」みたいな新しい政党が支持を広げているのを見て、何か関係があるのかなって。
博士: ユウキくん、素晴らしい視点だ。まさにその通り。世界中で、伝統的な価値観や自国の利益を最優先に考える「保守」や「右派」と呼ばれる勢いが強まっている。そして、その波は日本にも確実に訪れているんだ。
ユウキ: そんな中で、総裁選のニュースを見ていたら、高市早苗さんが、その参政党や日本保守党と協力するような話をしていると知って、びっくりしました。自民党の総裁を目指す人が、他の党と組むってどういうことなんですか?
博士: それこそが、今回の総裁選で高市さんが仕掛けている、最も大胆な戦略なんだ。これは現在トップを走ると言われる小泉さんに勝つための、非常に有力かもしれないが、極めてリスクの高い大博打と言えるかもしれないね。
ユウキ: 大博打…ですか。どういうことでしょう?
博士: まず、高市さんの置かれている状況を思い出してみよう。彼女は党の草の根メンバー(党員)からの人気は絶大だが、国会議員の支持では小泉さんに後れを取っている。さらに、彼女が実現したい「強い日本」のための政策、例えば憲法改正や防衛力の強化には、現在の連立パートナーである公明党という大きな壁が存在するんだ。
ユウキ: 公明党が壁? 仲間の政党じゃないんですか?
博士: そこがミソなんだ。公明党は「平和と福祉の党」を掲げていて、自民党の保守的な政策に対しては「ブレーキ役」を自認してきた。高市さんからすれば、自分が総理になっても、公明党がいる限りアクセルを思い切り踏み込めない、というジレンマがある。
ユウキ: なるほど…。そこで、参政党や日本保守党が出てくるわけですね。
博士: その通り。高市さんは、自分と考えが近い「保守仲間」と手を組む可能性を示唆することで、一石二鳥、いや三鳥を狙っている。
第一に、自民党内の保守層へのアピール。「自分こそが、バラバラになった保守勢力を結集できる唯一のリーダーだ」と示すことができる。
第二に、公明党への牽制。「君たちが反対するなら、我々には別のパートナーがいる」という無言の圧力をかけ、交渉を有利に進めようとしている。
そして第三に、総裁選での勝利への道筋だ。自民党から離れて参政党などを支持している保守層の票を、「高市総理」の誕生で自民党に取り戻すという大義名分が立つ。
ユウキ: すごい戦略ですね…。でも、そんなにうまくいくものなんでしょうか? 政策とかは合うんですか?
博士: 非常に良い質問だ。下の表を見てごらん。高市さんたち「保守連合」と、現在の連立パートナーである公明党の政策を比較したものだ。一目瞭然だよ。
政策分野 | 高市氏・日本保守党・参政党 | 公明党 (現在の連立パートナー) |
---|---|---|
憲法改正 (9条) | 積極的。自衛隊の明記や戦力不保持の削除を主張。 | 9条堅持が基本。改正には極めて慎重。 |
安全保障 | 防衛力の抜本的強化。より主体的な役割を志向。 | 専守防衛を堅持。集団的自衛権の行使には厳しい制約。 |
エネルギー政策 | 外国製太陽光パネルに反対。次世代炉などを推進。 | 再生可能エネルギーの導入を推進。 |
皇室 | 男系継承の維持を強く主張。 | 安定的な皇位継承に関する議論を静観。 |
歴史認識 | 戦後の歴史観を見直し、日本の伝統や歴史に誇りを持つべきと主張。 | 未来志向の日中韓関係など、近隣諸国との協調を重視。 |
ユウキ: うわっ、本当ですね!憲法や安全保障みたいな大事なところで、考え方が正反対じゃないですか!これじゃあ、高市さんが総理になっても、公明党がいたらやりたい政策は進められないわけだ。
博士: そういうことだ。だから高市さんは、イデオロギーを共有できる新しい仲間と組むことで、この「ブレーキ」を外し、日本の政治のあり方を根本から変えようとしている。まさに、自民党の連立の形を20年ぶりに変えるかもしれない、壮大な構想なんだ。
ユウキ: でも、博士。これが「ハイリスク」なのはどうしてなんですか?
博士: 最大のリスクはやはり「選挙」だよ。自民党は、国政選挙で公明党の支持母体である創価学会の組織票に大きく助けられてきた。この強力な集票マシーンを失って、果たして選挙に勝てるのか。ただし、公明党は今回の参議院選挙で議席を減らしていて、その集票力の低下が懸念材料として存在している。
高市さんは、新しい保守連合でそれを補って余りある票を集められる、選挙に勝てると賭けているわけだが、これは未知数だ。選挙で落選したくない自民党の衆議院議員がこの考えに乗ってくれることによって、不足している議員票をどこまで集められるかが鍵だ。総裁選の2回目の投票に持ち越されてしまえば小泉さんに決まってしまう可能性が極めて高いので、高市さんは第1回の投票で過半数を得られるように動く必要がある。ハイリスクな戦略だと言えないかな。
ユウキ: 確かに…。しかし、選挙で勝つためにと言っても、参政党はワクチン政策とか、ちょっと独特な主張もありますよね?参政党も自民党と組むとは言っていないようですが。
博士: その通り。特に参政党の公衆衛生に関する考え方は、自民党の主流とは大きく異なる。もし本当に連立を組むとなれば、そうした政策の違いをどう乗り越えるのかという大きな課題も残っている。だからこそ、これは総裁選に勝つための、そして日本の政治を大きく右に舵を切るための、まさに乾坤一擲の大勝負なんだよ。
ユウキ: なるほど…。世界的な右傾化の流れを追い風に、高市さんが日本の保守勢力を再編しようとしている。成功すれば日本の形が大きく変わるけど、失敗すれば自民党が選挙で大敗するかもしれない…。総裁選の裏で、とんでもない駆け引きが行われているんですね。
博士: そうだね。高市氏のこの動きが、単なる選挙戦の戦術で終わるのか、それとも日本の政治の地殻変動の始まりとなるのか。我々は歴史の岐路に立っているのかもしれないよ。