ユウキ: 博士、総裁選もいよいよ終盤ですね。前回、小泉さんが一歩リードしていると聞きましたが、最近のニュースを見ていると、なんだか状況が混沌としてきたように感じます。
博士: その通りだ、ユウキくん。選挙戦はまさに「三つ巴」のまま最終局面に突入した。そして、どの候補も1回目の投票で過半数を獲るのは難しい情勢で、勝負の行方はほぼ間違いなく「決選投票」に持ち越されるだろう。
ユウキ: やはり決選投票ですか!そうなると、誰と誰が残って、どういう戦いになるのかが重要ですね。
博士: まさにその通り。決選投票は、国会議員の票の重みが圧倒的に増す、全く別のゲームだ。考えられるシナリオは主に3つ。それぞれの可能性と票の流れを分析してみよう。
シナリオ1:小泉氏 vs 高市氏(発生確率:高)
博士: これは最も可能性が高い、主流派のエースと草の根保守のスターによる頂上決戦だ。第1回投票で、小泉さんが議員票、高市さんが党員票をそれぞれ固め、2人で決選に進むパターンだね。
ユウキ: この場合、どちらが有利なんですか?
博士: 冷静に分析すると、小泉さんが有利だ。決選投票では、3位以下で敗退した林さんや茂木さん、小林さんの票がどこへ流れるかが鍵になる。林さんを支持していた旧岸田派の議員たちは、イデオロギー的に高市さんよりは小泉さんに近い。また、党の重鎮である麻生さんや、茂木さんたち主流派も、高市さんのような急進的な保守路線が党の分裂を招くことを恐れて、より安定的で協調路線を取る小泉さん支持でまとまる可能性が高いんだ。いわば「反高市」連合が形成されやすい構造になっている。
ユウキ: なるほど…。高市さんが党員に人気でも、国会議員たちの「永田町の論理」で包囲されてしまうわけですね。
シナリオ2:小泉氏 vs 林氏(発生確率:中)
博士: これは、林さんが予想以上に議員票を伸ばし、高市さんを逆転して2位に滑り込むシナリオだ。
ユウキ: 経験豊富な林さんが相手なら、小泉さんも大変そうですね。
博士: ところが、この組み合わせになった場合、小泉さんの圧勝が予測されている。林さんは、麻生派や茂木派との関係が良くないとされているんだ。そのため、これらの派閥は、ライバル派閥出身の林さんを勝たせるくらいなら、と小泉さん支持に回る可能性が高い。高市さんを支持していた保守層の票も、林さんよりは小泉さんに流れるかもしれない。林さんは、決選投票で勝つための「連合」を組むのが構造的に難しいんだよ。
シナリオ3:高市氏 vs 林氏(発生確率:低)
博士: これは、小泉さんがステマ問題などで大きく失速し、まさかの3位に沈む、あるいは総裁選から撤退するといった大波乱のシナリオだ。
ユウキ: もしそうなったら…?
博士: この場合は、林さんが有利だろう。保守派の高市さんと、穏健派の林さんという、分かりやすいイデオロギー対決になる。そうなると、小泉さんを支持していた主流派の議員たちは、高市さんの急進的な改革を警戒し、「高市総理」を阻止するために林さん支持で結束するはずだ。党内全体のバランスで言えば、やや穏健派が多いため、林さんに票が集まりやすいんだ。
ユウキ: なるほど…。決選投票は、誰と誰が当たるかで、票の流れが全く変わってしまうんですね。まさにチェスみたいだ。
博士: そうだね。そして、このチェス盤をさらに複雑にしているのが、君が気になっている最近の動きだ。
ユウキ: まずは小泉さんのステマ問題です。あれで流れは変わりましたか?
博士: 大きく変わった。あれがなければ、小泉さんが第1回投票で過半数に迫る勢いだったかもしれない。あの問題で彼の「クリーンな改革者」というイメージが傷つき、勢いが完全に止まってしまった。これが、高市さんが党員票で猛追し、逆転する調査結果まで出てくる大きな原因になった。決選投票になった場合も、対立候補の陣営が「倫理的に問題がある」と攻撃する格好の材料を与えてしまった。
ユウキ: 一方で、林さんが議員票を増やしているという話も聞きます。
博士: うむ。林さんは官房長官としての安定感と豊富な経験が、一部のベテラン議員に評価されている。ただ、先ほども言ったように、他の派閥との関係が壁となり、議員票の伸びには限界がある。高市さんを3位に落とすほどの勢いには、今のところなっていないというのが大方の見方だ。
ユウキ: 最後に、高市さんの「保守連合」戦略です。参政党や日本保守党との連携を示唆したのは、良かったんでしょうか、悪かったんでしょうか?
博士: これぞ諸刃の剣だね。党員票に対しては、非常に効果的だったと言える。「自民党の本来の姿を取り戻す」「保守勢力を結集するリーダー」というイメージが、保守的な党員の心を強く掴んだ。しかし、議員票に対しては、マイナスに働いた可能性がある。連立を組む公明党は、安全保障などで「ブレーキ役」を自認しているから、高市さんのような考えの政党と連携することに強い警戒感を示す。選挙で公明党の協力が不可欠な議員たちからすれば、「高市さんを総裁にしたら連立がギクシャクして、自分の選挙が危なくなる」と躊躇する原因になるんだ。
ユウキ: うわあ…。党員にウケる戦略が、議員には敬遠される…。本当に難しいですね。
博士: そういうことだ。まとめると、総裁選は「小泉 vs 高市」の決選投票というメインシナリオに向かって進んでいる。小泉氏はステマ問題で失速し、高市氏は党員票で猛追しているが、保守連合戦略が議員票の足かせになるかもしれない。そして、その背後では麻生さんをはじめとするキングメーカーたちが、誰にどう票を動かせば自分たちの影響力を最大化できるか、チェスの駒を動かす準備をしている。最終的な勝敗は、この複雑な方程式の解によって決まるんだ。